« 2011年7月 | トップページ | 2011年9月 »

2011年8月

2011年8月24日 (水)

2011.08.24

8月24日の作品

<作品>

「ドングリ」と聞くと冒険家の植村直己さんを思い出す。大学山岳部時代についたあだ名は体格や風貌(ふうぼう)に似合っていた。しかし情熱と行動力は並外れていた。のちに五大陸の最高峰をきわめ、極地を駆け、没後に国民栄誉賞を受けた▼そんな、ただ者でないドングリがいるのかどうか。きのうの東京本社版「かたえくぼ」が、〈『大豊作』/どんぐり/――民主代表選〉と寸鉄で刺していた。その背比(せいくら)べに、大粒のクリが割って入った図といえよう。前原前外相が代表選への出馬を決めた▼外国人献金問題や次の本格政権狙いなど、火種や思惑含みでここまで不出馬の意向だった。だが「B級グルメ」は失礼にしても、他の顔ぶれはやはり「二列目」の感がある。クリへの好悪はおいて、エース級の参戦で緊張感は高まろう▼これまで菅首相の後任は、次への中継ぎと目されていた。だが国民の誰が、民主党にそんな余裕があると見ていよう。崖っぷちだし、来年秋への打算や思惑が、今日に懸命な被災地に希望をもたらすはずもない▼それにつけてもだが、首相レースは内向き過ぎないか。まず口に出るのは小沢氏の処分への対応だ。すり寄り、詣(もう)で、変節の話にうんざりする。だが、原発はどうする?増税は?――大事なことはよく聞こえてこない▼ドングリにせよクリにせよ、首相は国民のための首相であって、小沢さんのために選ぶのではない。〈言うだろう菅さんの方がよかったと〉。川柳欄の予感が当たらないよう願いたい

続きを読む "2011.08.24" »

2011年8月18日 (木)

2011.08.18

8月18日の作品

<作品>

私見だが「サラリーマン」という言葉はあまり良い意味では使われない。我々も時折、「近ごろの記者はサラリーマン化したねぇ」などとチクリと刺される。サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ……という流行歌もあった▼サラリーの語は、ローマ時代の兵士に与えられた「塩を買うための報酬」に由来する。貴重だったらしく、中世英国では家に塩の貯蔵庫のあることが貴族の自慢だったという。人は塩なしに生きられない。そして猛暑の夏、「塩入り」の食べ物、飲み物に人々の手が伸びている▼熱中症でこれまでに、全国で約3万5千人が救急搬送された。予防意識の高まりが「塩人気」を生み、ある飲料メーカーの塩サイダーは発売1カ月で年間目標を超えた。スーパーの棚には各種の塩(しお)飴(あめ)がずらりと並ぶ▼〈ことごとく死にゆく輩(やから)と思へども死にさうもなき一人二人(ひとりふたり)ゐる〉。島田修二さんのユーモラスな一首だが、死にそうもない頑健者が病むのを「鬼の霍乱(かくらん)」と言う。霍乱とは熱中症や食あたりをさすそうだから、暑気は侮れない▼その暑さも明日あたりから一段落らしい。列島の天気予報は久々に傘のマークが連なっている。雨のあと、高い天に刷(は)いたような雲が浮けば、夏と秋がすれ違う「ゆきあいの空」となる▼とはいえバテが出る頃だけに、盆明けの電車に揺られるサラリーマンも楽ではない。生身の体をかばいつつ秋を待ちたい。もうひと辛抱か、ふた辛抱か。残暑の酷ならざるを、お天道様に願いながら

続きを読む "2011.08.18" »

2011年8月17日 (水)

2011.08.17

8月17日の作品

<作品>

ゆうべは各地で送り火が焚(た)かれて、ご先祖様はお帰りになった。瓜(うり)の馬と茄子(なす)の牛には、来るときは馬に乗って少しでも早く、帰りは牛でゆっくり名残を惜しんで、という心遣いがこもる▼ひるがえって政界である。「退陣表明」後も茄子の牛に揺られるごとくだった菅首相が、ようやくのお引き取りとなる。こんな時は永田町の動きは速い。思惑は入り乱れ、盆休みが明ければ「ポスト菅」一色となろう。早ければ今月中にも新首相が選ばれる▼菅さんはこの辺が潮時だろう。刀折れ矢尽き、燃え尽きるまで行けば本望でも、一国の首相はそうもいかない。震災に超円高が重なる難局に、首相の退陣時期が最大関心事の政治では、貧相にもほどがある▼後任選びで先行するのは野田財務相という。七福神の衣装が似合いそうな野田さんだが、増税論者らしい。さらに野党との大連立を唱える。それにはマニフェストの見直しが避けられない。そして原発。このあたりの絡み合いが争点となろう▼大連立を飾る「オールジャパン」のイメージは力強い。ある目的のために組むという行為は高揚感を呼ぶ。企業も合併で意気上がる。三国同盟の興奮も昔あった。突破力という魔法の杖を得る気になるが、ここは冷静に、マイナス面への思慮も必要だ▼動き始めた「剛腕」もいる。こういう時は水を得た魚のようになる、不思議な人である。復権をかけて瓜の馬ならぬ「勝ち馬」に乗りたいらしい。見飽きた映像の再放送なら、もう御免だが。

続きを読む "2011.08.17" »

2011年8月 2日 (火)

2011.08.02

8月2日の作品

<作品>

欧州では「ゆっくり行く者が遠くまで行く」と言うそうだ。わが方は「急(せ)いては事を仕損ずる」である。高速列車が脱線転落して10日、中国政府は東西の格言に挑むかの性急さで、事故を終わった話にしたいらしい▼たちまち運転が再開され、原因究明はおぼつかない。遺族は平均年収の30倍という賠償金を示され、国内メディアは独自の報道や評論を禁じられた。国家事業の高速鉄道を、長々と滞らせぬ決意とみえる。国策という巨岩は、民のしかばねを越えて転がり続ける▼国外にも累が及ぶ原発をこの調子で造られては困るが、原子力については日本でも、国策の暴走がまさに問われている。なにしろ監視役の原子力安全・保安院が、原発を推し進める黒衣だったというのだから▼保安院に頼まれ、電力会社はシンポジウムに社員を動員したり、住民に「模範質問」をさせたりした。公が手を染めた点で、佐賀県知事が九州電力に促した形の「やらせメール」と同じ罪深さだ▼そもそも、原発推進の経産省に保安院がぶら下がる構造がおかしい。アクセルの横に、ブレーキの形をした別のアクセルがある。そんな欠陥車は、名ばかりのガードレールを突き破るしかなかった▼かの国のように、世界をあんぐりさせて強権を振り回すだけが国家統制ではない。安全神話を創作したのは、より洗練された隠微な世論誘導だ。ブレーキ役になれなかった反省を糧にし、メディアの責任を全うしたい。皆で原発から「遠くまで行く」ために。

続きを読む "2011.08.02" »

« 2011年7月 | トップページ | 2011年9月 »

フォト