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2012年4月

2012年4月27日 (金)

2012.4.27

2012年4月27日の作品

<作品>

政治を動かした判決といえばやはりロッキード事件だろう。1983年秋、東京地裁は田中角栄元首相に有罪を言い渡し、闇将軍が表舞台に戻る日は遠のいた。約1年後、田中派の重鎮竹下登らは、分派行動ともいえる創政(そうせい)会の旗揚げへと動く▼だれの時事漫画だったか、元首相が「ああせいこうせいとは言ったが、そうせいとは言っとらん」と嘆く傑作があった。田中は心痛と深酒で脳梗塞(のうこうそく)に倒れ、失意のうちに影響力をなくしていく▼さて、この判決は政治をどう動かすのか。資金問題で強制起訴された小沢一郎氏の、無罪である。大まかな経理処理の方針は承知していたが、うその記載を巡る秘書との共謀までは認められないと▼小沢氏は折にふれ、「今後は一兵卒で」と殊勝な言を重ねてきた。くびきを解かれた兵卒が見すえるのは、秋の代表選か、集団離党や新党か。消費増税の前途多難といい、野田首相は頭が痛かろう▼民主党は、各自の当選を目的とした非自民の選挙互助会でもある。にわか作りの公約が破れ、政策や手法が敵方に似てくるほど、小沢流の原点回帰は説得力を増す。首相の使い捨てが続く中、「なれたのにならない」政治家の凄(すご)みも無視できまい。だが顧みるに、この人が回す政治に実りは乏しかった▼若き小沢氏は心ならずもオヤジに弓を引き、創政会に名を連ねた。以来、創っては壊しの「ミスター政局」も近々70歳。「最後のご奉公」で何をしたいのか、その本心を、蓄財術とともに聞いてみたい


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2012年4月26日 (木)

2012.4.26

2012年4月26日の作品

<作品>

郷土愛にあふれ、とにかく大きいものが好きなテキサス州の人々は、米国ジョークに欠かせぬ存在だという。米50州の中で面積も人口も2番目とあって、1番へのこだわりは大抵でないらしい▼ここ2年、ワールドシリーズに進んだレンジャーズへの期待を思う。悲願まであと一球と迫りながら、カージナルスに逆転優勝を許した去年の悔しさ、いかばかりか。三度目の正直を託された助っ人が、ほかならぬダルビッシュ有投手である▼大リーグの新天地で4度目となる登板は、強豪ヤンキースをホームに迎え、黒田博樹投手との日本人対決に。その大舞台で10三振を奪い、名うての打線を沈黙させた。胸のすく3勝目だった▼打者を追い込むと、観衆が立ち上がって三振を求める。それに応えるたびに、場内を「YU~」の響きが包んだ。生まれたての「テキサス自慢」を祝福するように。札幌ドームとは違う控えめなガッツポーズに、覚悟と、喜びが詰まっていた▼6年総額6千万ドル(約50億円)で契約した25歳に、ファンの視線は温かくも甘くない。背負うものの重さは本人にしか分かるまい。多くを語らずマウンドに向かう背番号11を、今はただ見守りたい▼黒人初の大リーガー、ジャッキー・ロビンソンに名言がある。「不可能の反対語は可能ではない。挑戦だ」。厚い人種差別の壁を、バット一本で打ち砕いた選手である。幸い、しなる右腕を阻む壁はない。挑んでこそ見えてくる地平へと、行けるところまで、行くだけだ


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2012年4月25日 (水)

2012.4.25

2012年4月25日の作品

<作品>

タブーの由来は「聖なる」というポリネシア語らしい。太平洋に散らばる神秘の島々には、恐ろしげな禁忌や呪術があったのだろう。いま原子力発電の信奉者が恐れる呪文は、忌むべき13の音で構成される。〈なければないでなんとかなる〉▼あと10日ほどで北海道の泊(とまり)3号機が止まり、国内で動く原発はなくなる。その節目を前に、電力9社が「原発がない夏」の算段を示した。猛暑になれば関西、九州、北海道が需要のピークを賄えず、平年なみの暑さでも関電はかなりの不足という▼だから大飯(おおい)を動かしたいとの理屈だが、業界のお手盛り体質を思うと素直にうなずけない。他社からの融通、節電のゆとりはもうないのか、政府の検証委は重箱の隅を大いにつついてほしい▼枝野経産相の発言は揺れた。先々は脱原発でも、この夏の大阪が暗転の汗地獄にでもなれば原発の存在感はいや増し、「脱」の勢いが陰る。そんな迷いがあるようだ。師匠の仙谷さんはずっと単純に、原発ゼロを集団自殺に例えた▼しかし、安全と必要を秤(はかり)にかけてはいけない。両にらみではなく、安全を確保した上で必要なら動かす、これが筋道だ。そして原発に絶対の安全はなく、万一の害毒は広域、将来に及ぶ。福島の教訓である▼大飯の運転再開を問う本紙調査によると、地元福井県も近畿圏も反対が優勢だ。停電の警告ひとつで民意が一変するとは思えない。むしろ節電に励むだろう。取り返しのつかない事故を経て、私たちは多くを学んでいる。

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2012年4月24日 (火)

2012.4.24

2012年4月24日の作品

<作品>

日本が「最後の5羽」で人工繁殖に賭けたのは1981年だった。同じ年、絶滅と思われていた中国で「最後の7羽」が見つかる。そこから日中で始まるトキ再生の物語。雨後の草むらに火をつけるような苦闘の先に、小さな炎が揺れ始めた▼新潟県佐渡市で放鳥されたトキから、初のヒナがかえった。環境省の無人カメラがとらえた子は、餌をねだって親のくちばしをまさぐる。日本の自然界で孵化(ふか)が確認されたのは36年ぶりだ▼親鳥が保温や餌やりに励み、テンやカラスが襲わなければ、5月下旬にも巣立ちが見込まれるという。人が関わらない「野生のリレー」を目ざすからには手助けはできない。なんだか胸が詰まる▼日本のトキは、乱獲や戦後の乱開発で03年に絶滅した。中国から届いた個体による人工繁殖は成功し、4年前に佐渡で始まった放鳥は5回、78羽を数える。半数以上が生き抜き、抱卵中のつがいも多いそうだ▼あらゆる生物には、したたかに種(しゅ)をつなぐ知恵が備わる。ある種が短期間に死に絶えるのは、だから自然なことではない。この地球で「不自然な力」を振り回している種は、一つしかない。〈絶滅種数え尽くして青い空〉小池正博▼日々100種ほどが地球から消えているという。多くは、トキのように美しくも、パンダのように愛敬者でもない。彼らへの供養には足りないが、せめてこの空に、ニッポニア・ニッポンの学名を持つその鳥をお返ししたい。それが環境を、つまり人を守ることにもなる。

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2012年4月21日 (土)

2012.4.21

2012年4月21日の作品


<作品>

アルゼンチンからフォークランド諸島を奪い返した英国は、3年後に軍用空港を造った。開港式は、しかし国会議員の放言でぶち壊しになる。「軍政と闘ったアルゼンチンの母親たちは(やすやすと占領された)島民よりずっと勇敢だった」。外地では政治家も高ぶるらしい▼尖閣諸島の買い取りを米国で発表した石原東京都知事は、「政府に吠(ほ)え面(づら)かかせてやる」とけんか腰だった。それが成田空港では「国が乗り出し万全の態勢を敷くなら、東京はいつでも下がります」と落ち着いた▼つまり、国境の島々に都の表札を掲げることより、領土問題に鈍感そうな政府を動かす策だと。自らは「尖閣を国有地にした男」として名を残す。そういうことだろう▼確かに島が民有地のままでは、いつの日かあらぬ筋に渡りかねない。実際、海外からは「3島350億円」の打診もあったそうだ。領土保全のために公有化するなら、都ではなく日本国が買うのが本来である▼中国や台湾が領有を言い出したのは、周辺の海底資源が注目された1970年前後。昨今は漁船や監視船が出没し、明治期から続くわが国の実効支配を揺さぶっている。海洋進出を急ぐ中国は、南シナ海でもフィリピンやベトナムと摩擦が絶えない▼さてどうする。隣人との友好は大切だが、腫れ物に触るような毎度の外交では、先方がさらに踏み込んでくるかもしれない。こと主権に関しては筋を通し、争点はとことん話し合うのがまともな国だろう。世界が見ている


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2012年4月19日 (木)

2012.4.19

2012年4月19日の作品

<作品>

政治家の失言には「あっけらかん」という部類がある。「個別の事案についてはお答えを差し控える、法と証拠に基づいて適切にやっている。この二つで国会を切り抜けてきた」。そう言い放って辞めた法相がいた▼田中防衛相の国会答弁も二通りしかないようだ。「しどろもどろ」と「とんちんかん」である。昨日の衆参予算委でも、一つしか聞かれていないのに「3点についてのご質問ですが」と切り出し、委員長に注意される場面があった▼答弁に詰まる大臣に事務方が耳打ちをし、四方から資料が差し出される図は、二人羽織や千手観音に例えられた。面白うてやがて悲しき助け舟。毎度「冷や汗のパパ」を見せられる真紀子夫人もつらかろう▼憎めぬお人柄なれども、指揮官役には不向きと思われる。命がけで現場に向かう自衛隊員たちが、その顔を思い浮かべて奮い立つだろうか。野田首相は迷走ぶりを「無知の知」とかばったが、大臣が勉強するまで有事は待ってくれない▼野党がとうとう問責決議案を出した。選挙違反を疑われて「問責仲間」となった前田国交相と違い、法に触れるような所業があったわけではない。だがこの資質で地位にとどまること自体、政府あげての静かなる不祥事といえる▼外交担当の最高顧問として「害遊」する元首相といい、これでもかとツボを外した人事が、民主党には目立つ。失言より罪深い、あっけらかんの不適材不適所。任命権者に差し上げたい言葉は無知ではない。無恥である。


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2012年4月18日 (水)

2012.4.18

2012年4月18日の作品

<作品>

孫のかわいさは絶妙の「距離感」によるという。血が引き寄せる親しみと、育てる責任のない気楽さの二重奏である。北朝鮮の国父金日成(キム・イルソン)主席も、「次の次」候補として金正恩(ジョンウン)氏に目をかけたと思われる▼晴れて3代目となった氏は、11歳で死別した祖父のコピーを演じている。ふくよかな体形、髪形はすでに完成品、軍事パレードでの演説も、低い声や語り口が若き日の国父に重なった。ただ若さゆえか、原稿は棒読みで早口だった▼先代の金正日(ジョンイル)総書記は、国民の前では寡黙を貫き、肉声の記録は20年前の5秒間しかない。その遺訓に沿った演説内容ながら、いきなり大群衆の前で20分とは様変わりである。路線は父を継ぎ、スタイルは祖父をまねる。これが正恩流らしい▼江戸川柳に〈売家(うりいえ)と唐様(からよう)で書く三代目〉がある。落ちぶれた孫が家屋敷を売りに出す。商いより遊芸に凝ったことは、はやりの中国書体を使った張り紙で分かると。初代の労苦を知らず、恵まれた中で育った3代目は多芸だが脇が甘くなる、との戒めである▼かの国の跡継ぎはスイスに留学し、米国発祥のバスケットを愛する。先代より世情に通じていると祈りたいが、居並ぶ番頭らの思惑もあり、国際社会への吉凶は読めない▼国連安保理は、ミサイル発射を強くとがめる議長声明を出した。中国やロシアも同意の上だ。民に語りかける口はありそうな3代目、さて聞く耳があるか。ここで世界の声を聞き逃すと、早晩ハングルで「売家」と書くことになる


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