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2013年1月

2013年1月30日 (水)

2013.01.30

1月30日の作品

<作品>

海を渡って幸せだったのかどうか、しわに埋もれた目は多くを語らない。東京・井(い)の頭(かしら)自然文化園のアジアゾウが66歳になり、日本で飼われてきたゾウの長寿記録を塗り替えた▼はな子は1949(昭和24)年、2歳でタイから来た。戦後初の輸入ゾウとして人気を呼んだが、まず、ねぐらに忍び込んだ酔っぱらいを、次に持病で倒れた職員を死なせてしまう。荒れる巨体は鎖につながれ、処分を迫る声も出た。幸い、新しい飼育係が鎖を解き、人間不信を癒やしてゆく▼その名は、戦中の猛獣処分で餓死させられた上野動物園の花子を継ぐ。餌ほしさに芸を見せる花子の悲話と同様、はな子の波乱の半生も童話や手記になった。ゾウの威容はそれ自体ドラマチックだ▼平和の世、優れた飼育技術が行き渡り、今や動物園も長寿社会である。輸入規制により仲間を増やしにくい種もある中、人気者の老境をどこまで見せるか、施設の悩みは深い▼コアラの国内最高齢は現在、91年に生まれた大阪・天王寺動物園のミクで、人間なら100歳。握力が衰え、たびたび木から落ちるため、通常120センチという止まり木の高さを約半分にした。樹上の主らしからぬ姿は忍びないと、非公開で余生を送る▼大阪生まれのミクのように、自然界を知らぬまま天寿を全うするものも多い。動物たちはただ生きているだけで、命や地球に関わる深遠なメッセージを発し続ける。むろん人間についても多くを教えてくれる。愚かさと弱さ、そして優しさも


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2013年1月29日 (火)

2013.01.29

1月29日の作品

<作品>

失意の時を経て、ひと回り大きくなる人もいるし、芸や信念に磨きがかかることもあろう。何によらず復活の舞台は感動的だ。その点、安倍首相の所信表明演説は思いのほか薄味だった▼理念より実務か、特段の高揚はない。わずかに、時代がかった言辞が目立つ程度だ。「病のために職を辞し、大きな政治的挫折を経験した人間」が、「国家国民のために再び我が身を捧げんとする決意の源は、深き憂国の念にあります」と▼20分弱の短さ、ヤジはなく、時おり拍手が起きる。衆院は3分の2以上が与党席だから、どこか党大会のよう。下野した民主党の消沈に思う。チェック能力は大丈夫か▼政権の色をより端的に語るのは、大枠が固まった予算案だろう。防衛費を11年ぶりに上積みし、自衛官も8年ぶりに増員する。尖閣の海空で続く中国の挑発への、これぞ「憂国の念」である▼頑張る人は報われる。この基本が揺らぐことへの「憂国」も大きいらしい。生活保護の支給額が、働く貧困層の消費支出より多いといった矛盾だ。勢い余って過去の物価下落分まで削る結果、特に子育て中の保護世帯には痛い減額となる。自助を促すというには、手荒すぎないか▼憂国首相にとって通常国会は、ご本人言うところの「過去の反省」を試す場となる。ここまでは経済対策を軸に安全運転で、株価も支持率も高い。夏の参院選までは世論をにらみ、車線の真ん中を行くつもりと思われる。さて、右端で待つ支持層がどこまで辛抱できるか


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2013年1月28日 (月)

2013.01.28

1月28日の作品

<作品>

大ニュースではないが、驚いてしまう記事がある。3年前にこんな記述があった。ある人が幼稚園で講演したとき、若い母親に「お茶って自分の家で作れるんですか」と聞かれた。「はい」と答えると、彼女はこう言ったそうだ▼「私のお母さんがお茶を作っているところ、見たことがない。いつもペットボトルのお茶を飲んできた」。彼女はどうやら、お茶を「いれる」という言い方も知らないらしい▼一昨年も似た記事があった。料理教室の先生に、急須を「これは何ですか」と聞く受講生がいたという。だが、そうした例が驚くにあたらないのを、きのう東京で読んだ記事で知った。日教組の教研集会で「今の高校生は日本茶の入れ方を知らない」という報告があったそうだ▼福岡県立高校の家庭科教諭が生徒にアンケートしたら、冬に家で飲むお茶を「急須でいれる」と答えたのは2割しかなかった。授業では急須を直接火にかけようとする生徒もいたという▼おそらくは「粗茶ですが」や「茶柱が立つ」といった言葉も知らないのだろう。市販の飲料は手軽でいいが、文化や歴史をまとう「お茶」と無縁に子らが育つのは寂しい▼「客の心になりて亭主せよ。亭主の心になりて客いたせ」と言ったのは大名茶人の松平不昧(ふまい)だった。庶民もお茶でもてなし、もてなされる。いれてもらったお茶は、粗茶でも心が和むものだ。コンビニエンス(便利)と引き換えに大事なものをこぼして歩いているようで、立ち止まりたい時がある


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2013年1月26日 (土)

2013.01.26

1月26日の作品


<作品>

海外の任地から降り立ち、入国審査に進む時の「帰郷感」は忘れがたい。冬であれば、あちらでは拝めない高い空が楽しみだった。こぎれいな到着ロビーも、日本語の広告もうれしかった。そうした感慨とは無縁の帰還もある▼アルジェリアでテロに遭った方々が、政府専用機で羽田に降りた。過半は棺(ひつぎ)に横たえられて……。給油地のフランクフルトを経て17時間。この遠さが、熱砂のガス田開発にかけた男たちの、覚悟と情熱を語る▼日揮の社員ら、現地の日本人17人のうち10人が落命した。最後にご遺体が確認され、専用機に間に合わなかった新谷(あらたに)正法(ただのり)さん(66)は同社の最高顧問、出張中の悲劇である。身元確認の決め手が指輪の刻印だったと聞いて、愛妻家に合掌した▼10人を助ける手立てはなかったか。むごい結末を受け、反省と対策が語られている。友好国と通じてテロ情報に強くなる、アフリカ支援を広げる、そして自衛隊に邦人救出を担わせる、などだ▼自衛隊は今、現地の安全を確かめないと出せない。そこで安倍政権は、危なげな地にも送り、邦人を守れるようにする法改正に動くらしい。自衛隊が操る政府専用機の活用は、「普通の軍隊」への露払いにも見える▼むろん、テロ攻撃への対応は企業の手に余る。では米英仏のように、重武装の特殊部隊を待機させておくか。これも論外だ。丸腰と重武装の間に正解があるとも限らない。誰より意見を聴くに値し、述べる権利もあった10人は、祖国から永遠(とわ)の旅に出る


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2013年1月25日 (金)

2013.01.25

1月25日の作品

<作品>

水晶占いが「2問で1万円」と聞いて、客が「ちょっと高くないか」と問う。占師は「はい高いです。では二つ目の質問をどうぞ」。その抜け目なさ、その手際……。自民党の、電光石火の「先祖返り」を目の当たりにし、笑えぬジョークを思い出した▼早手回しの復古は、経済再生の手順に鮮明だ。厳しい財政下で脱デフレを急ぐにあたり、産業界と公共事業への深い「理解」がのぞく。まずは大企業や地方の建設業者に元気になってもらい、やがて民の懐が温まるのを待つ構えである▼税制改正では、消費増税の埋め合わせを求める自動車業界の意向をくんで、自動車取得税が廃止される。あおりで減収となる地方自治体の悲鳴も聞き入れ、自動車重量税は専ら道路につぎ込むらしい▼使途を道路に限る特定財源は、ムダな工事の温床と批判され、麻生政権で一般財源になった。まさか「道路族の財布」までよみがえることはない、と信じたい▼大多数の道路は暮らしや商いに役立っている。トンネル惨事が教える通り、その安全には手入れが欠かせない。大綱も「維持管理・更新等のための財源」とするが、囲い込んだ金には浪費がつきもの。永田町や霞が関で使う「等」の字は曲者だ▼去年の貿易赤字が過去最大の約7兆円となった。富と人口が減る国を内から支えるには、何はさておき、働き手への応援歌を奏でるべきだ。族議員の懐メロを聴いている時ではない。「高くつかないか」。占師ではなく、水晶玉に問うてみたい


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2013年1月24日 (木)

2013.01.24

1月24日の作品

<作品>

旅行会社に勤めるS氏(38)は定期健診で糖尿病の疑いを指摘された。精密検査で治療不要と分かったが、彼は以後、受診そのものをやめてしまう。「結果が出るまで、同僚と飲みに行っても楽しくないし、仕事にも集中できない。あんなストレスはこりごりです」と▼『健康診断の「正しい」読み方』(吉田和弘著、平凡社)にある話だ。健診で何か見つかり、働き盛りに「病身」のレッテルを貼られるのも怖かったという。だが、できる人こそ丈夫で長持ちしてほしいのが会社の本音である▼コンビニ大手のローソンが、健診を受けない社員と上司のボーナスを減らす新制度を、春から採り入れるそうだ。労使合意の「罰金制」により、社員3500人の完全受診を目ざす▼受診の催促(年3回)を無視し続けると、翌年度のボーナスが本来の支給額から15%カットされる。上司も管理責任を問われて10%減、勧められた再検査をサボっても削られるという▼予防医療を担う職場健診は、年1回以上が労使に義務づけられている。ただ、多忙などを理由に受けない人もいて、ローソンの昨年度の受診率は84%だった。ちなみに、朝日新聞の東京本社は昨秋が93%。日頃の不摂生を案じての高率にも思える▼健診を受けると健康になる、なんてことはない。エックス線撮影の被曝(ひばく)など心身の負担も伴うけれど、その功は罪に勝ろう。毎年の義務、というより権利を捨てては、望んでも受診しにくい人に申し訳ない。S氏、お元気だろうか


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2013年1月21日 (月)

2013.01.21

1月21日の作品

<作品>

命の重さは同じでも、悲しいかな、その量り方は一様でないらしい。アルジェリアの天然ガス施設へのテロ事件は、政府軍の性急な作戦により、日本人を含むとみられる人質20人以上が亡くなる惨事となった。企業戦士らの受難に言葉もない▼国情を知り尽くす会社でも、異国の辺境で働くからには危険がつきもの。商いとはいえ、現地に良かれとの思いが士気を支えてもいただろう。それぞれ息子で、夫で、父でもあった命が、乱暴に「外国人人質」とくくられ、砂漠に消えた▼約10カ国にまたがるサハラ砂漠は、アフリカの3分の1、中国ほどの広さがある。人類の知恵と根気を試すように、熱砂の下には豊かな資源が眠る。幸いの、そして、災いのもとである▼北アフリカから中東に及ぶ「アラブの春」。体制のタガが緩み、砂漠はテロリストの楽園と化しているそうだ。金づるは誘拐の身代金、麻薬や武器の密輸と聞く。イスラム武装組織の実体は、聖戦をかたる山賊といえる▼無法者に対するのは、基幹産業と威信を守りたい国家。冷たい歯車二つに巻き込まれた生身は、どうにも無力だ。人質を無視したかのような制圧劇は、人命より重いものがある国の現実を語る▼30人を超す武装勢力も殺された。同情の余地はないが、憎しみは彼らの肉親に受け継がれ、国境をまたいで報復の連鎖が始まろう。背景には深い貧困と、天然資源を民の幸せに生かせない失政がある。出口なき混迷に、サハラを渡る熱風のような焦燥が募る


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2013年1月20日 (日)

2013.01.20

1月20日の作品

<作品>

敗戦5日後、ソ連軍が南下する樺太から最後の引き揚げ船が出る。1500人がひしめく船内に、3人の子を連れた母がいた。船は稚内経由で小樽に向かう途中、魚雷で沈んだ。母親を船酔いにし、稚内で下船させたのは相撲の神様なのか。色白の末っ子は、名横綱大鵬になる▼納谷幸喜(なやこうき)さんが、72歳で亡くなった。母が生地の北海道から樺太に渡り、ウクライナ人と出会ったのも縁だろう。その父親とは戦中に離別、少年時代は道内を転々とし、重労働で家を支えた▼大量の薪を割り、ツルハシで道を直し、スコップで砂利をすくう。険しい山に苗木を植え、柄が背丈ほどある鎌で下草を刈った。腰を入れて体全体で鎌をひねる動作は、得意技のすくい投げにつながる▼32回の優勝は別格だ。ライバル柏戸の剛に対して柔、自在な取り口で受けて強かった。対戦相手は「柏戸は壁にぶつかる感じ、大鵬は壁に吸い込まれる感じ」と振り返る。その姿、その所作、静止画にたえる横綱だった▼子どもが好きなものを並べて「巨人、大鵬、卵焼き」と言われた全盛期、巨人と一緒は面白くなかったらしい。「有望選手を集めれば勝つのが当たり前。こっちは裸一貫なのに」と。晩年、若手の没個性や、稽古量の乏しさをよく嘆いた。「日本は豊かになりすぎた」▼貴乃花が土俵を降りて、きょうで10年になる。大鵬、貴乃花、白鵬。美しく強い綱の系譜はまだ伸びるのだろうか。相撲を取らずとも、ただ見とれていたい力士が少なくなった


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2013年1月10日 (木)

2013.01.10

1月10日の作品

<作品>

英国のロンドンで10年あまり前、子どもたち数百人がデモ行進をした。体罰反対を訴えるためで、首相あての手紙を渡して「愛の鞭(むち)は存在しない」などと訴えた。英国は学校での体罰が法律で禁じられた後も「鞭の復活」を求める声の多いお国柄だという▼鞭を許す空気は、17世紀に書かれたジョン・ロックの名高い「教育論」にさかのぼるそうだ。ロックは体罰を強く戒めている。しかし完全に否(いな)とはせず、ごく限られた場合には認めた▼「叩(たた)くことは子の矯正に用いられる最悪の、したがって最後の手段である」と述べている。体罰は無論排されるべきだが、ロックの言葉がある種の同意を誘うのも、一方の事実なのだろう。体罰は古くて新しい問題として、私たちの前に立ち現れる▼だが、そうだとしても、今回の大阪の件は論外だ。高校バスケットボール部の顧問教諭から体罰を受けていた17歳の男子が自ら命を絶った。常態化していたらしく、顔をはらして帰宅していたという。指導ではなく最悪の暴力にすぎない▼体罰の情報はあったという。だが学校側は教諭本人に聴いて「体罰はない」と判断していた。子どもでも分かるおざなりに呆(あき)れる。どうしていつもこうなのか。悔いても謝っても消えた命は戻ってこない▼体罰に「いい体罰」も「悪い体罰」もない。ロックには敬意を表しつつ、あくまで恐怖と身体的な苦痛なしで子らを育て、導く「覚悟と決意」が大人に必要だ。いま一度あらため、固め直すときではないか

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2013年1月 9日 (水)

2013.01.09

1月9日の作品

<作品>

うっかりすると見逃しそうな小さな記事だった。5日付の国際面に「詩人の金芝河(キムジハ)氏39年ぶりに無罪」とあった。50代半ば以上の世代なら、ひとつの時代の象徴のように、その抵抗詩人の名を記憶している方も少なくあるまい▼韓国の体制に抗して繰り出す詩は、紙つぶてとなって権力者を撃った。よく知られる「五賊」は長編の風刺詩だ。財閥や国会議員、高級官僚、将軍らを国に巣くう五賊と呼び、〈夜昼のべつ盗みにはげみ、その技(わざ)これまた神技(かみわざ)の域〉(姜舜〈カンスン〉訳)などとこきおろした▼民主化運動の弾圧事件で1974年に死刑判決を受ける(のちに減刑)。この年にはソ連の反体制作家ソルジェニーツィン氏が国外追放されている。国家体制も状況も異なるが、2人の抵抗人の「良心」が様々に語られたものだ▼そのころの韓国は軍政下にあり、言論統制は厳しかった。たとえば新聞の場合、官憲が各社に常駐して記事を検閲したそうだ。真実を書くのに覚悟が求められた▼時は流れて金氏は無罪を勝ち取った。その報を読みつつ目を転じれば、中国で「言論の不自由」への抗議が湧き上がっている。南方週末という新聞の新年号が、当局の指示で違う紙面に変えられたという▼この抗議を人々の「良心」ととらえたい。言論の自由を欠いたままでは、中国は大国になっても成熟できまい。民衆の口を封じるのは川を止めるより危険――。いずれ不満が高じてあふれ出すからだが、政府が省みるべきそんな古言も、中国にはある


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2013年1月 7日 (月)

2013.01.07

1月7日の作品

<作品>

近所の資源ごみ置き場に、和洋の酒瓶が山と積まれていた。わが家にも動かぬ証拠が10本ほど転がる。宴(うたげ)の果てといえば美しいが、中身の行方を思うと切ない。曜日の配列に恵まれた年末年始、飲み食いでふやけた向きは多かろう▼ご同輩、ひと区切りつけるなら本日の七草粥(がゆ)である。年をまたいで酷使した臓器をねぎらい、無病息災を願う。白地に緑は目にも優しく、罪滅ぼしの青菜は蕪(かぶ)か大根で足る。淡泊な甘みを確かめたら、つくだ煮など濃いめの味を添えてみたい▼作家の井上荒野(あれの)さんは独り暮らしを始めた頃、粥と煮魚で大人を自覚したという。残った煮汁にワカメをくぐらせ、白粥に盛る。「元気なときに食べてもおいしいものだとわかった」と、本紙「作家の口福(こうふく)」に記している▼そう、ごちそうはカニやマグロだけではない……と納得していたら、築地市場の初競りで大きな本マグロに1億5540万円がついた。キロ70万円、新春のご祝儀では説明できぬ相場らしい▼「マグロに高値がつくとワクワクするでしょう」。香港の同業に競り勝ったすしチェーン社長は、景気回復への思いを語った。宣伝の散財にしても華やぐ話題ではある。ただ、三が日の延長戦のような美食三昧(ざんまい)は、鉄の胃を持つ人にお任せしよう▼ささやかながら当方、空き瓶を転がして内需には貢献している。身に染みる朝粥のうまさは、いわば健康ゆえのぜいたく、ありがたいことである


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2013年1月 6日 (日)

2013.01.06

1月6日の作品

<作品>

新春の株価が高いと、浮かれた気分になる。縁のない当方にしてこれだから、ムード先行と侮るなかれ、景気を下から支えるのは気の字である▼金融緩和と積極財政に突き進む首相を、市場は潤んだ目で仰ぐ。衆院解散が決まり、政権交代が秒読みとなって以来の円安、株高。期待が先立つ安倍バブルに、米国の景気後退が遠のいた安心感が加わった▼日銀の首根っこを押さえてお金をあふれさせ、防災を理由に公共事業のタガを緩める。金融と財政で当座をしのぐ間に、規制緩和などで企業の投資を誘い、デフレを脱する――これが新政権の経済政策、世に言うアベノミクスらしい▼その成否は、暮らしへの波及で見極めたい。輸出企業や建設業者は一息ついたものの、国の借金がまた膨らみ、物価だけ上がって雇用や賃金はさっぱり、というのが最悪。「日本売り」を招きかねない▼とはいえ、立ちすくむ暇(いとま)はない。伊勢神宮に参拝した安倍首相は、巳年(みどし)にちなみ「蛇は商売繁盛のシンボル。経済再生にロケットスタートを切りたい」と語った。兜町の反応は「皮算用」が過ぎるとしても、脱皮を重ねる蛇には再生のイメージもある▼ここで流れが変わらないと、日本は衰退に向かうだろう。去年は貿易赤字、人口減が過去最大になったと聞く。どさくさ紛れに原発を動かされては困るが、頼れそうなものは総動員すべき時ではある。世の中の「気」はもちろん、干支(えと)も神仏も


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